現役インフラエンジニアが、AWSクラウドプラクティショナーとAWSソリューションアーキテクトの両資格を取得した前後で、業務にどういう影響を与えたかについて、経験談を交えながらお伝えします。
受験した詳細や感想なども載せていますので、これから資格受験を考えている方、インフラエンジニアのお仕事に興味がある方、インフラエンジニアになって間もない方へ、少しは参考になれば幸いです。
はじめに
私は現在インフラエンジニアとして1年半勤務しています。オンプレ環境とAWS環境の両方を操作する業務に従事しており、オンプレではサーバやOSの設定、運用、保守や各種ミドルウェアの設定、運用、保守を担当しています。
AWSについては、資格取得前はメジャーなサービス(EC2やVPC)を知っているくらいで、クラウドに対しての知識はほとんどない状況でした。現在はクラウドプラクティショナーとソリューションアーキテクトの資格取得を得て、日々勉強しながらAWSの作業をしています。
私がインフラエンジニアとして勤務して約10ヶ月頃(2022年9月)にクラウドプラクティショナー試験に合格することができ、ソリューションアーキテクトはクラウドプラクティショナーの約7ヶ月後(2023年3月)に合格することができました。
インフラエンジニアになる前は異業種で働いていました。
AWS認定クラウドプラクティショナー試験
AWS Certified Cloud Practitioner は、AWS クラウドの概念、サービス、および用語の基礎的な理解を提供します。過去にITやクラウドの経験がない非技術職の方や、オンプレミスでのIT経験があり、AWSクラウドへの基本的な知識が必要な方にとって、良いスタート地点となる資格です。この認定は、ロールベースのAWS認定に挑戦する候補者に自信を与えてくれます。
AWS公式サイトより
クラウドプラクティショナーはAWS全体の資格の中でも基礎コースに位置付けられ、業務未経験者や非エンジニアの方も取得される方が多いようです。
クラウドプラクティショナーの試験概要
- 試験名称
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AWS認定クラウドプラクティショナー
- 受験料
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12,100円(税込)
- 試験時間
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90分
- 出題形式
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65問 複数の選択肢と複数の答えがある問題
- 試験会場
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テストセンター or 自宅 (オンライン)
- 合格基準
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720点(得点範囲:100~1000点)
- 言語
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英語・日本語・韓国語・中国語
- 期限
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取得から3年間
勉強方法・勉強期間
「AWS認定クラウドプラクティショナー」の試験対策本を2周読みました。
※1周しただけではAWSのサービスやAWS-Well-Architectedフレームワークの設計思想などが理解しづらかったため。。
また、Udemyの「この問題だけで合格可能!AWS認定クラウドプラクティショナー模擬試験問題集」の基礎問題と応用問題を100点近くになるまで解きました(問題を覚える勢いで)。
Udemyのレベルは比較的難しい問題が多く、解き始めの頃は1つの問題を解くのにかなり時間がかかっていました。。
勉強期間は約2ヶ月間で、通勤電車で約1時間勉強していました。
私の場合、業務でもAWSを操作する機会がありましたので、通勤時間を利用した学習で合格することができましたが、業務でAWSを操作しない方は、もう少し勉強時間を取る必要があると思います。
受験後の感想
サービスの内容を単に覚えるだけでは合格することは難しいと感じました。私自身AWS-Well-ArchitectedフレームワークやTrusted Advisorなど運用に関する内容を細かく理解できていない部分があり、運用系の問題を解くのに苦労したので、もう少しこの辺を理解する必要があると思いました。
また試験対策本やUdemyにでてくるサービス以外にも出題される(そんな数は多くはないが)ので、自分の知っているサービスから消去法で解く場面も多々ありました。実試験の問題のレベル感的には、Udemyの基礎問題と応用問題の間くらいで、試験対策本の模擬問題よりは少し難しいくらいでした。
クラウドプラクティショナー取得前の自分のレベル感
受験する前、業務ではオンプレ 9割:AWS 1割くらいの使用感でしたので、AWSをあまり操作しておらず、メジャーなAWSサービス(VPCやEC2)を知っているくらいでした。また実際にAWSの作業を頼まれた際にも、頼まれたAWSのサービスを調べるところからスタートするような状況でした。
クラウドプラクティショナー取得後の自分のレベル感
クラウドプラクティショナー取得後はAWSの仕事を少しずつもらえるようになりましたが、業務ではオンプレ 8割:AWS 2割くらいの使用感になったくらいでした。AWSのサービスの中身を細かく理解している訳ではないので、サービスの大まかな概要を知っているだけでも、頼まれた仕事の仕事内容を理解するスピードが早くなったように思いますが、AWSの仕事を任せてもらえるレベル感ではないと感じました。
取得後の具体的な作業の一例
不要IAMユーザの削除
不要なIAMユーザを、AWSコンソールより順番に削除するという作業でした。IAMがどういうユーザなのかをクラウドプラクティショナー試験で簡単に理解していたので、作業するのに時間はかかりませんでした。
オンプレにあるファイルを、AWS CLIを使用してS3バケットにファイルコピー作業
S3は耐久性に優れた、容量無制限のオブジェクトストレージとなります。オンプレ環境のサーバに大量に保存してあるファイルを、AWS CLI(Command Line Interface)を使用して、S3のバケットへコピーする作業をしましたが、S3の基礎的な知識と、ネットでCLIのコマンドを検索し、実施することができました。
ElasticBeanstalk環境に、テスト環境をクローンして、デプロイ検証を実施
ElasticBeanstalkは定番のインフラ構成を自動構築するサービスです。この説明ではおそらく意味が分からない方が多いと思いますので、詳細が気になる方はネットで調べてみてください。
この環境を理解するのは、実際に業務で使用していないと難しいのではないかと思います。私も仕組みを理解するのにかなり時間がかかり、今でも詳細まで把握できていません。
ただ業務で使用している環境をクローンし、そのクローンした環境に検証するコードを記述し、デプロイするという作業でした。
一見難しく思いますが、作業の流れを1度覚えてしまうと、そこまで難しい作業ではないので、クラウドプラクティショナーの知識でも実施できました。
AWS認定ソリューションアーキテクト試験
AWS認定ソリューションアーキテクト – アソシエイトは、幅広いAWSのサービスにわたるAWSテクノロジーに関する知識とスキルを示します。この認定の焦点は、コストとパフォーマンスが最適化されたソリューションの設計にあり、AWS Well-Architected フレームワークに関する深い理解を示します。この認定は、認定された個人のキャリアプロファイルと収益を向上させ、利害関係者やお客様とのやり取りにおける信頼性と自信を高めます。
AWS公式サイトより
ソリューションアーキテクトの試験概要
- 試験名称
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AWS認定ソリューションアーキテクトアソシエイト
- 受験料
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本試験:16,500円(税込)
※クラウドプラクティショナーを受験していた場合、半額バウチャー使用可能 - 試験時間
-
130分
- 出題形式
-
65問 複数の選択肢と複数の答えがある問題
- 試験会場
-
テストセンター or 自宅 (オンライン)
- 合格基準
-
720点(得点範囲:100~1000点)
- 言語
-
英語・日本語・韓国語・中国語
- 期限
-
取得から3年間
勉強方法・勉強期間
試験対策本の「AWS認定ソリューションアーキテクト」を1周し、模擬試験を2回実施。
無料で使えるping-tサイト(ソリューションアーキテクト版)を使って、個別問題を全問解きました(全529問)
またping-t模擬問題を3回程実施(模擬問題もギリギリ70点取れるくらいで受験しました)
勉強期間は約3ヶ月で、通勤電車で約1時間勉強していました。
クラウドプラクティショナーと同様、私の場合は業務でもAWSを操作する機会があったことから、通勤時間を利用した学習で合格することができたと思います。
受験後の感想
クラウドプラクティショナーの試験問題とは違い、試験の問題文が長く、解くのに時間がかかってしまい、全問解き終わったのが終了5分前でほぼ見直しができず終了しました。
ただping-tの模擬問題と実試験問題で類似した問題が多く出題されていた印象がありましたので、ping-tを実施することをオススメします。(※あくまで個人的な感想です)
ソリューションアーキテクト試験は、ソリューションアーキテクトとしてインフラ構成をどう組むかという設計思想な部分、またAWSサービスでトラブルが発生した際の対処について最適な解を問われるなど、実際の業務に活かすことができる問題が多かったので、勉強して本当によかったと感じています。
ただ、今回の試験勉強でAWSのサービスや内容を深く知ることができますが、AWSのコンソールを実際に操作して勉強するという方法をとっていなかったので、実際の業務で、サービスの内容や動きは知っているけど、どうやってこれを設定したらいいか?、どこを見たら既存の設定を見れるか? など操作に困る部分が多々ありますので、学習した内容を実際にハンズオンして、自分の技術にする必要があるなと感じました。
ソリューションアーキテクト取得前の自分のレベル感
クラウドプラクティショナーを取得後から半年経過し、AWSの作業も少しずつ慣れ、作業機会が多くなっていました。業務ではオンプレ 7割:AWS 3割くらいの使用頻度となっていました。AWSのサービスの種類を大まかに認知している状況で、与えられた業務をこなすことができるレベル感でした。
ソリューションアーキテクト取得後の自分のレベル感
ソリューションアーキテクトの資格を取得したことで、AWSの作業を任せてもらう機会が増えました。クラウドプラクティショナーを取得した際は、解のある作業を設定したり実施するフェーズでしたが、ソリューションアーキテクトを取得した際は、与えられた業務の方針を自分で考え、実施するというフェーズになりました。
現在の作業割合は、オンプレ 5割:AWS 5割くらいの頻度でAWSを使用していますので、学んだ知識を業務でハンズオンすることで、反復学習へ繋げることができています。
取得後の具体的な作業の一例
テスト環境にEC2サーバを構築(サブネット・セキュリティグループ・ルートテーブル・NATゲートウェイ・IAMロール作成など)
クラウドプラクティショナーを取得した段階では、EC2サーバを構築するにも、個々のサービスの繋がりが把握できておらず、構築するにもどのAWSのサービスが必要なのかを調べるところからスタートするといった感じでしたが、ソリューションアーキテクトで詳細な知識を学ぶことで、改めて個々のサービスの本質を理解し、構築もスムーズに行うことができました。
Auroraマイナーバージョンアップ作業実施
AuroraはAWSが独自に開発した新しいデータベースエンジンです。Auroraのバージョンアップ作業はAWSコンソールから操作することで、お手軽に実施することができますが、バージョンアップする上で本番環境への影響がないか、バージョンアップ時には瞬断が発生しないかなど、検証作業が必要となります。
上記の作業を実施する上で、Auroraの基礎的な知識(クラスタ構成やエンドポイントなど)をソリューションアーキテクトの勉強で身に付けたことで、バージョンアップの作業も任せてもらうことができました。
トラブル対応
私1人で対処することはあまりないですが、実際にCloudWatchのアラームやその他監視で異常が発生した場合、事象を理解し、素早く復旧できる手段を考え、対応する必要があります。その場合、ソリューションアーキテクトで学んだ知識は、一刻を争う場面でも役立ちます。
まとめ
AWSクラウドプラクティショナーとAWSソリューションアーキテクト両方の試験を受験してみての経験談いかがでしたでしょうか?私はインフラエンジニアとして勤務して1年半経過していますが、インフラエンジニアになり立ての頃は、こんなに資格勉強をしていると考えもしていませんでした。
両資格の合格はしましたが、業務を通して理解できていない所や新たなAWSサービスも頻繁に更新されるので、今後も継続して勉強する必要があると考えています。
業務を任せてもらうということは、それなりの知識を蓄え、業務をこなし、周りのメンバーにも認めてもらう必要があります。そのために、資格勉強は最短ルートでそれを証明できると考えています。
資格勉強をすることは大変なことですが、自己学習を積み重ね、業務以外で努力した結果が自分の付加価値(プラスワン)を生み出し、次の仕事に繋がると考えていますので、皆さんもぜひ資格取得に挑戦してプラスワンのエンジニアになってください。
2021年入社。インフラエンジニアの将来性に大きな可能性を感じて異業種から転職してきた。一人前のインフラエンジニアになるため、日夜猛勉強中。
知識を得れば得るだけ、新たに知らないことが出てくるIT業界の果てしない大海原を将来にむかって航海中。